経営判断において直感を信じるべきか? 

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私たちは多かれ少なかれ、直感に従って判断を下しています。
そしてそのほとんどは日常の些細な判断だと思います。
それでは、経営者として経営判断を下す場面においても直感を信じるべきでしょうか?

この点については、直感の信憑性について分析がなされたマルコム・グラッドウェル著「第1感 最初の2秒のなんとなくが正しい」という本が非常に参考になります。

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳)
マルコム・グラッドウェル 沢田 博
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著者マルコム・グラッドウェルはまず、直感の信憑性はかなり高い場合があると述べています。
例として、心理学者のジョン・ゴットマンは、夫婦の会話1時間分を解析すれば、その夫婦の15年後の関係(夫婦仲が良好か険悪か)を95%の確立で予測できたといいます。
そして、解析する時間を15分、3分と短くしていっても、高い確率で15年後の関係を予測できたそうです。
ジョン・ゴットマンは、夫婦の会話のうち4つの感情にのみ注目すればその夫婦の将来を予測できるといいます。4つの感情とは、「防衛」「はぐらかし」「批判」「軽蔑」の感情です。

ここで注目すべきは、ジョン・ゴットマンが夫婦の関係を予測する上で参考とする情報を4つの感情に限定したという点です。

逆に、著者マルコム・グラッドウェルは、直感の信憑性が低い場合もあると述べています。
例として、アメリカの医師であるブレンダン・ライリーは、医師が膨大な情報に基づいて行う、患者が心臓発作の恐れがあるかどうかの判断は極めて不正確であったといいます。
ところが、ライリーは、過去の膨大なデータから重要であると考えられた項目の情報だけに基づいて判断を行うゴールドマン方式を採用した結果、それまでの医師の判断より70%も正確性が向上したといいます。

ここでも注目すべきは、ライリーが医師の判断の正確性を向上させる上で、参考とする情報を重要と考えられる項目に限定したという点です。
まとめると、直感の信憑性は情報が多いほど低くなり、情報を重要なものに限定するほど高くなるようです。

思うに、人間の脳は、それまでの知識や経験から、特定の情報が存在する場合は特定の結論を導きだすというパターンが膨大に存在し、それらの集合が直感として無意識に導き出される考えなのではないかと思います。
そして、これらのパターンは人間の知識や経験から作られるものであるため、結論が不正確なものも数多く存在すると考えられます。
これにより、情報が多くなればなるほど不正確なパターンが混在する量も増え、パターンの集合としての直感も不正確になっていくと考えられます。

また、そもそも情報か重要かどうかの判断基準は、過去のデータから結果に対して高い相関関係があると判断された情報(項目)であるため、人間の脳も正確性の高い結論を導くパターンを持っている可能性が高いと考えられます。
よって、情報を重要なものだけに限定すればするほど不正確なパターンが混在する割合が減り、パターンの集合としての直感も正確になっていくと考えられます。

そしてこれは、経営判断を下す場面においても同様であると考えられます。
経営判断もまた、膨大な情報に基づいて判断を下す場合は正確性は低くなり、重要な情報だけに基づいて判断を下す場合は正確性は高くなると言えます。


結論として、①判断が重要な情報にのみ基づいてなされたこと、②重要な情報とは、過去のデータから、結果に対して高い相関関係があると判断された情報(項目)であること、の2つの条件を満たす場合に限り、経営判断において直感を信じてもよいと言えます。

ただし、直感による判断に限らず、過去のデータとは異なる結果となってしまうことは往々にしてあり得るので、上記2条件を満たす直感による判断はあくまで正確性を高めるに過ぎないという点は注意すべきだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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