企業にとっての利益とは?

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最近ニュースを見ていると、日本の電機メーカーの営業利益が何十%も減少したとの報道をよく目にします。その原因は円高であるとか、商品に国際競争力が無くなったためであるとか言われていますが、そもそも利益とは一体何なのでしょうか?

簿記の本を読むと、利益とは売上から費用を引いたものである、と定義されています。
しかし、利益とは何か?というそもそもの意義を問う質問の答えにはなっていません。
この点について、P.F.ドラッカー著「マネジメント」に興味深い記述があります。

マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則
P・F. ドラッカー 上田 惇生
4478410232

「利益とは、原因ではなく結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするものである。したがって利益は、それ自体致命的に重要な経済的機能を果たす必要不可欠のものである。」

これはどういうことでしょうか。
まず、利益は「原因ではなく結果である」ということは、企業は利益を目的として事業を継続するのではなく、企業の理念(ビジョン)を達成するために事業を継続し、その結果利益が創出される、ということになります。
そして、結果として創出された利益は「それ自体致命的に重要な経済的機能を果たす必要不可欠のものである」ので、企業の継続に必要不可欠なものであり、事業活動を行う上での条件である、と言うことができます。
つまり、企業が理念(ビジョン)を達成するために行う事業活動の中で、企業を継続させるために創出しなくてはならないもの、それが利益であると言えます。

では、一般的に儲けと利益は区別されずに使用されていますが、これは本当に同じ意味でしょうか?

この点については、林總著「わかる!管理会計」の中でこのように定義されています。

新版 わかる!管理会計―経営の意思決定に役立つ会計のしくみを学ぶ
林 總
4478001537

「利益とは、企業が生み出した価値の大きさのことであり、企業活動の成果です。一方、儲けは商売を通して増加した現金のことで、営業キャッシュフローとも言います。」

まず、この本で定義されている利益の意味は、P.F.ドラッカー著「マネジメント」の意味と同じです。
そして、儲けは「商売を通して増加した現金」であるということは、実際にどれだけ利益が出ているかに関わらず、ある事業に対して元手として投入した現金に対する回収された現金との差額が儲けである、と言えますので、利益と儲けは全く異なった意味であると言えます。

このように、利益とは何か?の問いに対する答えを本を参考に見てきましたが、上記解釈はあくまで利益とはこうあるべき、というあるべき論であり、実際の用いられ方とは異なるように思います。
実際には、利益の最大化を目的として事業活動を行なっている企業はいくらでもあるように思います。
これは、仮に企業の理念が利益の最大化ではなかったとしても、そもそも企業は株主のものであり、上場企業の株式は流動化されたマーケットで自由に売買できることを考えると、企業の理念に共感したのではなく利益の最大化を目的として株式を購入する人間が株主になると、企業自体の目的も利益の最大化になってしまうという現実があるように思います。そして、マーケットで株式を売買する人間のほとんどは利益の最大化が目的でしょうから、利益を目的ではなく結果と見る上記の定義は、あるべき論としては正しくても、現実に即していない面があると言わざるを得ないように思います。

むしろ、現実に即した解釈をすると、企業は、企業を所有する個人または集団の目的を達成するために事業を継続し、その結果利益が創出される、ということになり、企業を所有する個人または集団の目的は、利益の最大化そのものであることがほとんどである、ということができます。
この解釈だと、利益とは、それ自体が原因となり得る結果である、ということができます。
このような解釈を正とする企業は、膨らみ続けながら廻る車輪のようであり、いつか膨張に限界が来て壊れてしまう運命にあるように思います。

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